起業に必要な人
株式会社の仕組み
わが国の会社法では、会社の形態は4つを定めている。その中でいちばんなじみなのが「株式会社」である。ザックリいうとお金を持っている人が、商売をするための株式会社という最低限の仕組みをつくって、その仕組みを使って上手に商売をする人にお願いするというものだ。
お金を出した人は、その代わりに株というものを引き受け、株主になる。株主は商売がうまくいって利益が出ると、その中から配当という形でお金を受取る。お金はただタンスにしまっていても変化しないが、このように上手に商売をしてくれる会社や人に差し出すことで、増える可能性が出てくるのである。
現代のIT化が進んだ社会では、商売をするにあたって最初に必要な土地や建物、設備などは限りなく必要なくなってきた。しかし、大航海時代や産業革命の時代では、商売をするためには、最初に莫大なお金が必要であった。
例えば、遠くの国から香辛料やお茶といった農産物を買い付けて運んできたり、大きな工場をつくってモノをつくるための設備をそろえたり、そのような労働をしてくれる人々を雇うための賃金など、たくさんのお金が必要であり、それを実現するための手段として考え出されたのが株式会社である。
お金を出す方は、自分が出せる範囲で出して、その分の株を受取る。利益が出れば、m持っている株の分だけ配当という形でお金がリターンされる。一方商売を任された方は、そのお金をもとに、自分が持っているお金だけではできなかったような大きな商売をすることができるのである。
坂本龍馬が亀山社中という組織をつくって、自分たちはお金がないのに、薩長や土佐藩からお金を出させて船を借り、海運事業をはじめたのは有名な話である。株式会社はこのようなことが可能なのである。
発起人
さて、実際に株式会社をつくるには、まず「発起人」と呼ばれる人がお金を出しつつ、最低限の決め事を決めることからはじまる。具体的には次のとおりだ。
・商売をお願いする「取締役」を選んでお願いする
・会社を運営する機関の形を決める(取締役会を置くかなど)
・いくらお金を出して(資本金の額)、なんの商売で稼ぐか(会社の目的)
・どこで商売するか(本店住所)
・会社の最低限のルールを決める(定款の作成)
・お金を実際に出す(資本金の振込)
・商売をする仕組みをお上に届け出る(設立登記)
設立登記までが発起人の仕事といっていい。登記が完了すれば、会社が法人という法律上の存在として認められ、なおかつ出してもらったお金が、「資本金」という形で手に入るのである。ここから先は取締役にバトンタッチである。
取締役
取締役をお願いされて引き受けると、その時点から「会社経営の責任者として会社の業務を意思決定し、実際に行っていく」」ことになる。そのような取締役として権利が発生するとともにセットで責任も負うことになる。
具体的には「善管注意義務」という良識と高い注意をもって業務にあたる、というものと「忠実義務」と呼ばれ、自分たち取締役と会社の間に利害関係が発生した場合でも、会社の利益になるように業務を行うというもの。
お金を出している側から考えるとあたりまえのことである。
取締役は最低1人以上選ばなければならないとなっている。ただし、会社の機関設計において取締役会を置くことにすると、その構成メンバーとして取締役を最低3人+監査役1名を選ばなければならない。
取締役会がない場合、法で定められている取締役会での決議事項は、株主総会で決議することになる。ある程度の規模の会社になってくると、いちいち株主総会を開くのは手間なので、取締役会を置いて、総会を経ることなく取締役会だけで決めて、スピード感をもって実行できるようにしているのである。
一方、ボクのような発起人=取締役というひとり起業の場合、総会さえも省略できるので、わざわざ取締役会を置かない機関設計をしているのだ。
株式会社の設立に必要な人は、発起人と取締役の最低2役、これは同一人物でも構わないので、起業はひとりでできる。
いままではすでにできあがった会社で働いてきたので、機関の運用や設計の知識については。ずいぶん実務で携わってきたが、そもそも会社をつくるときにはどのような役回りの人間が何人必要か、などということは考えもしなかったので、今回はいい勉強になった。