IVYおじさん日記

50代前半でメーカーを退職したIVY大好きオジサンの、次のキャリアに向けた活動なんかを中心にした日々の気づいたことを書いていきます。

震災時の人事管理 ~3.11の経験から~

熊本、大分でたいへんなことが起こっている。昨日からなんとなくFBやブログも自粛ムードというか、書く気が起らなかったが、友人のid:tutianbuさんの呼びかけにボクにもなにか役に立ことができるのではないかと思い、書いてみることにした。

 

3.11の経験

3.11当時、ボクは前職でメーカーの人事企画を担当していた。その会社の工場は宮城県にあり、まさに被災地域の真ん中にあった。ボクは当時本社に勤務していたので直接被災することはなかったが、地震発生以降3週間くらいは休みなしで会社の事業再開にあたったことを昨日のように覚えている。今回の地震においてもこれから収束に向かっていくと、必ず会社の営業再開に向けた活動や対応が必要になってくるので、少しでも参考になればと思い、人事部門における当時の対応を振り返っておくことにした。

 

安否確認

まずは、人命第一で従業員の安否確認からスタート。あわせて家族の状況や住居の被害状況なども確認しておくと今後の人のやりくりなどの調整もしやすい。ただし、当然PCは動かないので、すべて手作業。従業員名簿を紙で打ち出してなかったので、各課長、係長に部下の一覧の作成とチェックをさせた。従業員4千人全員の確認が終わるのに、1週間近くかかったように記憶している。

 

業務指示

電気、ガス、水道などのインフラがすべて止まっている状態なので、工場の設備を修復しても操業はできない。研究所もサーバーが倒壊し破損してしまい、ネットワークが使えないので、通常業務はストップ。したがって復旧や支援活動に必要な人員をのぞいては、自宅待機を命じた。当然、自宅や家族が被災した従業員については、そちらの対応を優先させた。結局、管理職全員+必要な一部の組合員のみ出勤することにした。

 

昼食手配

なにはなくともまず食事が必要。総務メンバーが駈けずり回って、毎日弁当を仕出ししてくれる業者を被災していない首都圏エリアに確保した。会社の復旧にあたるメンバーはかなりの精神的、体力的負荷がかかるので、おにぎりやカップ麺では体が持たない。

 

支援物資

前職の会社は、本社部門が北関東、工場が宮城にあったので、北関東から毎日定期便のトラックを走らせ、支援物資を送った。本社部門のメンバー数人が買い出しチームを作って、朝から市内のスーパーなどを回って、必要な支援物資を調達し、16時に出る定期便に乗せるのが2週間程度続いた。

 

勤怠の取り扱い

管理職は特別な取り扱いは特になし。組合員は自宅待機中の勤怠を特別有給休暇扱いにして給料は100%支給した。自宅待機期間中に組合員が出勤した場合、休んでいる者とのバランスを考慮し、休日出勤扱いに。もし無給にする場合には、労基法の休業補償として平均賃金の6割を支払わなければならないが、天災の場合は適用が除外になることもあるが判断が結構微妙なので要注意。

 

具体的には、労基法でいう「責めに帰すべき事由」の範囲は、故意・過失より広いと解される。まず、事業場の施設・設備が倒壊した場合、基本的には「使用者の責めに帰すべき事由」に該当せず、休業手当は不要。

 

それに対し、交通障害、取引先の被害等を理由とする間接被害については、原則として「使用者の責め」に含まれる。ただし、厚生労働省Q&Aには、「取引先の依存の程度、輸送経路の状況、他の代替手段の可能性、災害発生からの期間、使用者としての休業回避努力等を総合的に勘案し」と解釈に幅を持たせている。その場合、次の2条件のいずれも満たすことが必要。

  • その原因が事業の外部より発生した事故である
  • 事業主が通常の経営者として最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故である

 

判断が微妙であったり、平均賃金を計算している手間などを考えると、程度にもよるが従業員の生活も考え合わせ、全額払った方がいいと判断することも必要では。

 

給料支給

25日支給の会社だと、銀行への振込みデータ持ち込みは4営業日前なので、19日の火曜になるかと思う。したがって給料計算の仕掛中に地震が発生してPCも使えず計算ができない会社も多いのではないか。前職でも同じ状況であり、前月の振込みデータを使って同じ金額を仮で振込み、25日の支給日に間に合わせた。当然、翌々月の給料で本来の正しい金額との差額を精算した。

 

相乗り通勤

場所柄クルマ通勤が前提の会社であったのだが、ガソリン不足で通勤の足が確保できない事態になり、ガソリン供給の先が見えないこともあったので、ご近所どおし相乗りでの通勤をお願いし、通勤車両のガソリン消費を極力おさえるようにした。

 

入社日

新卒の入社前だったので、新卒者については、実際の出社を1ヶ月後ろ倒しして5月に入社式を実施して、実際に勤務スタート。手続き上は4月入社にして給料は1ヶ月分支給した。中途採用は、事情を説明し極力入社日を1ヶ月程度後ろに倒させてもらった。ただし、内定者は会社の事業運営が本当にこの先大丈夫かと心配なので、そこらへんの見通しの説明はていねいにする必要がある。

 

とりあえず、事業復旧までの優先順位の高い人事事項は、この程度かと思う。今後状況が落ち着いてきてフェーズが変わってくると、必要な対応も違ってくるので、今後折を見てまとめていきたいと思う。

 

今現地は本当にたいへんな状況におかれていると思うが、まずは、一刻も早い震災の収束を願う。